糖質はエネルギー源

糖質は、3大栄養素である炭水化物の構成成分です。

体内に入ると、血糖として即効性の高いエネルギー源となります。また、糖質は、グリコーゲンとして主に筋肉に貯蔵されます。体力は、この貯蔵されたグリコーゲン量に比例するとも言われ、筋肉量を増やすことは、グリコーゲンの貯蔵量、つまり、体力アップにも有効であると言えます。
しかし、それでも余るほど摂り過ぎた糖質は、中性脂肪に変えられ、内臓脂肪として体内に貯蔵され、肥満の大きな原因となります。

血液中の糖質は…

インスリンにより全身の細胞に取り込まれ、細胞内でエネルギーとして利用されます。

余るほど摂りすぎた糖質は…

脂肪細胞へ中性脂肪として蓄積され、脂肪細胞を肥大化させます。

血糖値を上げる唯一の栄養素

糖質は、血糖値を上げる唯一の栄養素です。
2型糖尿病の方では、1gの糖質が約3mg/dl、血糖値を上げると言われています。つまり、血糖の管理をしたければ、糖質の管理が不可欠です。どんなにエネルギーを低く抑えても、そのエネルギーに占める糖質の割合が多ければ、糖質量に比例して血糖値が上がり、食後高血糖は免れません。

食品 ごはん1膳
(150g)
サーロインステーキ
(150g)
カロリー 252kcal 476kcal
糖質量
(角砂糖1個5gとして)
55g=角砂糖11個 0.6g=角砂糖1/8個

食後高血糖の弊害

食事の度に血糖値が上がる食後高血糖に関しては、現在、国内外で、さまざまな健康リスクが指摘されています。

「グルコースおよびインスリン値の定期的な上昇は、糖尿病、環状動脈疾患、がん、老化など多くの点で健康に有害であることが強く指摘されている」※1

・食後高血糖および負荷後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子である
・食後高血糖は酸化ストレス,炎症,および内皮機能不全を引き起こす
・食後高血糖は癌発症リスク上昇と関連する
・食後高血糖は高齢2型糖尿病患者の認知機能障害と関連する
・食後高血糖は心筋血液量および心筋血流の減少と関連する
など※2

※1「ヒューマン・ニュートリション第10版 基礎・食事・臨床」(医歯薬出版株式会社)
※2「食後血糖値の管理に関するガイドライン」より

機能性低血糖症

インスリンにより全身の細胞に取り込まれ、細胞内でエネルギーとして利用されます。糖質を摂取して血糖値が上がると、膵臓のβ細胞からインスリンというホルモンが出て、血糖をエネルギーとして各器官に運びます。

そのため、健康な人であれば、どんなに糖質を摂取しても、インスリンのおかげで、一定の血糖曲線を描き、血糖を安定的にエネルギーとして各器官が利用できます。※1

この、インスリンの働きが機能しなくなり、高血糖状態が続く疾患が糖尿病です。

しかし、この、インスリンの働きが機能しなくなる前段階の、インスリンの働きが乱れる段階で、血糖の乱高下など血糖調整異常が現れる疾患があります。※2
それが、機能性低血糖症です。血糖の乱高下の際、さまざまな不定愁訴が現れます。

【不定愁訴】
幻覚、幻聴、無気力、不安感、眠気、だるさ、不眠、興奮、アレルギー疾患の悪化、原因の分からない体調不良など。

※1「正常な血糖曲線」

理想的な血糖の変化

※2「血糖調節異常」

反応性低血糖症乱高下型低血糖症無反応性低血糖症

糖質と不定愁訴

糖質の過剰摂取による血糖の急激な下降は、生命維持が危機にさらされるため、人体では、交感神経が緊張し、その結果、血管が収縮します。血管が収縮することで起こる不定愁訴が、冷え、肩こり、頭痛などです。

また、血糖が下がると、人体では、アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールなどのホルモンを分泌し、血糖を上昇させることになります。

このうち、アドレナリン、ノルアドレナリンは興奮系ホルモンと言われ、攻撃的になり、イライラしたり、些細な事でキレたり、精神の興奮状態を引き起こします。

コルチゾールは、本来、ストレスがかかったときに対抗するホルモンであり、また、アレルギーを防ぐ働きも持ちます。このため、糖質の過剰摂取によるコルチゾールの無駄遣いを続けると、ストレスに弱くなり、アレルギー症状の発症や悪化を引き起こします

糖化と認知症

糖質の過剰摂取と、アルツハイマー型認知症との関連で話題になっているのが「AGE(終末糖化産物)」です。アルツハイマー型認知症の特徴の1つとして、脳内に老人斑と呼ばれるシミのようなものが沈着し、神経細胞が死滅すると考えられています。この老人斑から大量に検出されているのがAGEです。長年の糖質の過剰摂取が、アルツハイマー型認知症の原因の1つではないかと言われています。

糖化が引き起こす人体への悪影響

糖質の過剰摂取により、糖化が進み、体のあらゆるところでAGEがたまることで、さまざまな病気のリスクが高まると考えられています。

動脈硬化
血管を構成しているコラーゲン繊維にAGEがたまることで、血管がかたくなり弾力性が失われて、動脈硬化が起こりやすくなる。
骨粗鬆症
骨のコラーゲン繊維にAGEがたまることで、骨がもろく折れやすくなる。
白内障
水晶体を構成するタンパク質が糖化してAGEがたまることで、水晶体の濁りの原因になる。

など

糖質を多く含む食品

  • 主食(ごはん、パン、麺など)
  • 芋類(じゃが芋、さつま芋、里芋、山芋など)
  • 菓子類
  • 甘味料(白砂糖、果糖ブドウ糖溶液など)
  • 清涼飲料水

糖質の可能性

人体のエネルギーは糖質(血糖)と脂質(体脂肪)の2つに大別できます。このうち、糖質は、即効性の高いエネルギー源です。そのため、痩せのあるアスリートや成長期の子ども、肥満のない方の運動前など、エネルギーが必要な方やシチュエーションによっては重要です。
糖質をエネルギーとして活用することで、摂取したタンパク質や脂質を、エネルギーではなく、人体の構成成分として有効活用できます。

糖質を摂るなら、空腹時に、糖質のみの単体摂取は避け、まずはタンパク質や脂質、食物繊維など、おかず=栄養を確保し、その後、糖質=エネルギーを入れましょう。

おすすめの糖質

  • かぼちゃをふかす:βカロテンやビタミンEも確保
  • 芋類をふかす:ビタミンCや食物繊維も確保
  • 季節の果物:色素成分(抗酸化物質)やビタミンCも確保
  • ごはんにじゃこやごまを入れる:タンパク質やミネラルも確保

食物繊維とは、「ヒトの消化酵素で分解されない、食物中の難消化性成分の総称」であり、水に溶けるものと溶けないものとに分けられます。

水に溶ける(水溶性)食物繊維
ペクチン・マンナン・アルギン酸など
水に溶けない(不溶性)食物繊維
セルロース・リグニン・グルカン・キチンなど

働き

水溶性食物繊維

  • 糖の吸収を緩やかにし、食後血糖値の急激な上昇を防ぐ
  • コレステロールの吸収を抑制する
  • 胆汁の分泌を促進することにより、脂肪の分解を促す
  • 胆汁酸を吸着し、体外に排泄させる

☆ポイント

腸内でドロドロになり、食物の腸内の移動を緩やかにし、
食べ物をゆっくり吸収させるため、食前に取るのがお勧めです。

不溶性食物繊維

  • 良くかむ事が必要になるので、ゆっくり食べるようになる。
  • 便をやわらかくしてカサを増やす事により腸のぜん動運動を活発にし、便が体内に留まる時間を短くする
  • 腸内の有用菌群を増やし、腸内環境を改善する ・・・など

※食物繊維は、それぞれ働きが違うため、様々な種類の食物繊維をとることが大切です。

食物繊維を多く含む食品

野菜、未精製の穀物、豆類、酵母、果物、海藻など

不足するとおきやすい症状

便秘
満腹感を得にくい など

治療の実際と改善例

栄養素の説明

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