栄養素の説明 - ビタミン

ビタミンE

ビタミンEは、もともと1920~1930年代に不妊のネズミの実験によって発見された脂溶性ビタミンです。別名「トコフェロール」とは、tocos(子どもを産む)、phero(力を与える)、ol(水酸基をもつ化合物の総称)という意味からきています。

しかしその後、ビタミンEのもつ強力なからだのサビ取り効果(抗酸化作用)が注目されるようになり、今では若返りビタミンなどと呼ばれるようになっています。

ビタミンEの吸収

キロミクロンビタミンEは食べた後、タンパク質のボール(キロミクロン)に吸収されて運ばれていきます。このときタンパク質不足だと、このボールがつくれずにせっかく摂ったビタミンEが無駄になってしまうおそれが出ます。

また、ビタミンEはあぶらに溶けるので、一緒に食べる脂質の量によって吸収率がちがってきます。

ビタミンEを摂るときは、あぶらやタンパク質もしっかり摂りましょう。

ビタミンEの種類

ビタミンEはトコフェロールとトコトリエノールの2つに大別されます。

トコフェロール トコトリエノール
α-トコフェロール α-トコトリエノール
β-トコフェロール β-トコトリエノール
γ-トコフェロール γ-トコトリエノール
δ-トコフェロール δ-トコトリエノール

トコフェロール

抗不妊因子として見つかったのは、α-トコフェロールのみです。妊娠という観点から見るとβ、γ、δ-トコフェロールの3つは働きが非常に低くなります。

しかし現在最も注目されている抗酸化作用は、δがいちばん強く、δ> γ> β>αの順となっています。

トコフェロールとトコトリエノールの違い

トコフェロールとトコトリエノールの化学構造炭素同士の結合が二重になっているかどうかがトコフェロールとトコトリエノールの差です。

二重になっているトコトリエノールのほうが柔軟性があるため細胞膜への侵入が良く、すばやく作用が発揮されます。

  • トコフェロール:持続性のある作用
  • トコトリエノール:即効性のある作用

天然と合成品のビタミンEの違いd-α-トコフェロールとdl-α-トコフェロール

ダイエタリーサプリメントでは、天然のビタミンEをd-α-トコフェロール、合成品のビタミンEをdl-α-トコフェロールと表示しています。合成のビタミンEは、安定化をはかるため、抗酸化にはたらく場所(水酸基、下図部分)に安定させるための物質をつけています。ゆえに合成ビタミンEに抗酸化能力は望めません。

d-α-トコフェロール(天然ビタミンE)の化学構造

ビタミンEの効果

ビタミンEの主な効果は以下の通りです。

α-トコフェロール
抗酸化作用、抗炎症作用、酸化ストレス抑制作用など
γ-トコフェロール
ナトリウム利尿作用
δ-トコフェロール
抗酸化作用
トコトリエノール
抗酸化作用、ナトリウム利尿作用、抗アレルギー作用、抗腫瘍作用、抗動脈硬化作用など

ビタミンEは単体ではなく、一緒に摂る ことによって効果が期待されます。

ビタミンEの働き 〜ビタミンEは細胞膜を守る〜

ビタミンEは脂質に溶けるので、細胞膜の脂質(不飽和脂肪酸)の部分に入り込んで細胞膜を守ると考えられています。

私たちのからだの中には60兆個の細胞がありますから、それ全部を守ろうとすると、多くのビタミンEが必要になってきます。

細胞膜の構造

私たちのからだは60兆個の細胞からできています。また、人のからだは60%が水分です。その水の中で細胞が細胞としての形と働きを保つために、一つひとつの細胞はあぶらとタンパク質でできた細胞膜で仕切られています。

細胞膜の構造は、水に溶けやすい頭の部分が外側にあり、水に溶けにくい脂質の部分が真ん中にはさまっている二重層のかたちになっています。

ビタミンEの働きと不足症状

ビタミンEの主な働きは抗酸化作用がいわれています。
そのほかの働きやビタミンEが不足した症状は以下の通りです。

働き 不足するとおきやすい症状
脂肪の酸化防止
  • 過酸化脂質ができやすい
    (老化・シミ・動脈硬化・生活習慣病の元凶)
生体機能調節
(ホルモンバランス、自律神経安定)
  • 生理障害・更年期障害
  • 生殖機能の衰え
  • 自律神経失調症
血行促進
  • 肩こり・頭痛・生理痛
  • 関節痛・腰痛・冷え
  • 循環器疾患

ビタミンEとビタミンCの相乗効果

ビタミンEとビタミンCによる細胞膜の抗酸化ビタミンEはビタミンCを一緒に摂ることで、相乗効果が得られます。

ビタミンEは体内のあぶらの部分を活性酸素から守ってくれています。このときビタミンCが一緒にあると、サビ取りをして疲れてしまったビタミンEをもう一度甦らせてくれるのです。

より適切な量のビタミンEをおすすめします

次のような方々には、より適切な量のビタミンE摂取をおすすめします。

  • スポーツ選手
  • 日光を多く浴びる方
  • 喫煙者
  • 汚染物質の多い環境におられる方
  • ストレスの多い方
  • 市販の揚げ物などをよく召し上がる方
  • 不飽和脂肪酸を多く摂る方
  • 病態を改善したい方

ビタミンEの臨床応用への期待

ビタミンEは、以下の臨床応用も期待されています。

  • 血栓形成予防
  • LDL酸化防止
  • 免疫力増強
  • 鉄欠乏貧血への応用
  • 糖尿病合併症の予防
  • 尋常性乾癬(ビタミンAとともに)
  • アトピー性皮膚炎(ビタミンCやビタミンAとともに)

ビタミンEを多く含む食品(1食当たり使用量と含有量)

ビタミンEを多く含む食品とその含有量は以下のとおりです。

食品 うなぎ アーモンド アボカド
1食当たり
使用量
蒲焼1/2尾分 10粒 小さめ1/2個
含有量 3.9mg 2.9mg 2.9mg

ビタミンEは足りていますか?

以下の項目をチェックしてみましょう。
該当したら、もしかするとビタミンE不足かもしれません。

シミが出てきた 生理不順である
  最近年齢を感じる   生理痛が気になる
  不規則な生活を送っている   不妊症が気になる
  食生活が乱れている   更年期障害が気になる
  疲れがたまっている   なんとなくだるい
  体温の調節がうまくできない   肩こりや頭痛が多い
  微熱が続く   胃腸の調子が悪い
  冷え性である   不整脈が出る

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